はい。漫画『二月の勝者 絶対合格の教室』の完結に際してまして。
前回に続いて、闇バージョンのレビューを始めていきたいと思います。
光バージョン
【中学受験】『二月の勝者』完結!ー推しがよければ全てよし【光のレビュー】│まわらないドットコム (mawaranai.com)
もう何があっても動じない
18巻まではたくさん言いたいことがありました。「そこはもっとこうだろ!」っていう。
こんな感じで
【中学受験】二月の勝者18巻感想①―こんなリアリティはいらない【涙】│まわらないドットコム (mawaranai.com)
【中学受験】二月の勝者18巻感想②―こんな入試日程はイヤだ│まわらないドットコム (mawaranai.com)
でも、19、20と巻が進むにつれて、だんだん心が凪いできました。
動じなくなった理由
前回も書きましたが、二月の勝者は要素がやたら多い漫画です。どの辺を期待して読んでいるかによって、刺さるエピソードが違ってくるんだと思います。
で、私は受験をがんばる子ども(+がんばる大人)の姿を見たくて読んでいました。
なので、心が動かなくなった理由は、受験が収束してきて子どもたちにフォーカスした描写が少なくなったことが1つ。
そしてもう1つ考えられる理由は、「もうこの子のことはいいや」と、1人、また1人と応援したい子が心から消えていったからではないかと思うのですよ。
例えば…
20巻までに心から消えていった子どもたち
もちろん、物理的に受験が終わって「よかった、よかった」と、円満に消えていった子がほとんどですよ。加藤くんとか。三浦くんとか。でも、メインどころは、そうなる前に心から消えた気がするのです。
島津くん
18巻を読み終えたときに、「島津くんが開成落ちるなら、もう知らん」的な宣言をしました。
いやだってさ。島津くん、開成への気持ちが消えちゃったらさー。「開成に行きたかったのは、島津父に洗脳されてたせいでした」って認めるようなものじゃない? 父親の受け売りじゃない、本当に自分が開成に行きたいんだ!というドラマを期待してたのに。
「大石山が気になる」「 女子が気になる…」って。洗脳が解けたら、選ぶのは都立の共学になるの? そうじゃないだろう…?? むしろ、さすが都立校の最高峰! って思うべきなのか??
私が中学受験推しなのは、私立推しだからなんだなと改めて思いながら、どうしても納得できず。
19巻で開成不合格が判明して、上杉くんとクロスカウンター涙を決めたとき。もらい泣きこそしましたが、同時に島津くんが心から消え去ってしまいました。
この時点で、開成繰り上げ合格と大石山合格は予想がついたし。さらには、ネタバレ事故で、なんとなく大石山進学が漏れ聞こえてきていたので。「島津くん? 誰だっけ…?」というところまでいってしまいました。
もうね。開成って何だっけ? それすら分からなくなってきました。
上杉くん
18巻末に島津くんの開成落ち匂わせがあった時点で、「あ、もちろん上杉くんも落ちるだろうな」と予想がつきました。そこで上杉くんの物語も終わりました。3日目は何も考えず(?)弟と同じ海上を受験する上杉くんを見て、アレ?と思って。3日時点で合格している東央に行くって言ってるのに、なんでしれっと4日に柴又を受験するんだよ。花恋なのかお前は。もう何も分からないよ。
もう、この子の役割りはクロスカウンター涙で終わったんだなと、思い知りました。
島津くんの繰り上げ合格を知って「ししょー、かっけー」じゃないんだよ。唇の1つも噛めよ!と、いつもなら騒ぐところでしたが、何の感情も沸きませんでした。
せっかく双子の受験っていう興味津々な属性があるのに、リアルをかなぐり捨ててる場合じゃない。
まるみちゃん
ごめん。JG・吉祥寺女子に連続で落ちて、ボロボロ泣いてるあたりで、もう存在感が薄れてきた。どうしても「そりゃそうなるだろ」っていう気持ちが拭えず。
でもこのときは、「チャレンジって分かってたんだから、もう少し毅然としたまるみちゃんも見たかった」と、まだ不満に思うことができた。
それが、18巻末で3日の湧泉は受験するだろう(そして合格するだろう)というのが丸見えで、黒木先生が匂わせてる通りどうせ繰り上げもあるんだろ…ってなって、どんどん冷めていきました。
その点、樹里ちゃんはおそらくJGは合格線上の不合格。そこ以外の合格は手堅く取ってる。で、合格できた学校への進学を楽しみにしている。そんな健気な姿を、素直に応援できていたのですが。
できていたのですが。
ちょっ…!
すみません。21巻でも、ここだけは感情が動きました。
あのね。ウチの娘もこの漫画を読んでいたのですよ。でも、これまで、特に感想を言い合うことはありませんでした。娘の中受はNN校残念ですから。おいそれと話題にできません。「この漫画読んで、どんなことを感じてるんだろうな」とは思ってましたよ。
そんな娘が今回、21巻を読んで「お母さん、どう思った?」と聞いてきたのですよ。
何してくれとんねん!!
って思った、って率直に言いましたよ。あり得ん!!! ってね。
JGは繰り上げの人数がとても少ない学校です。いない年も普通にある。定員にこだわってないんだろうなと思います。なのに。百歩譲って樹里ちゃんはアリだとしても、吉祥寺女子が繰り上げ合格のまるみちゃんが、なんでJGまで繰り上げやねん。
もうつっこむ力も残ってませんよ。
なぜこのような所業に及んだのか。
ページ数が余ったのかなー。
スーパー講師黒木の実績が、開成1 桜蔭1 武蔵1 雙葉1じゃ、イマイチ足りなかったかな。
それとも。
中学受験をファンタジーにしたかったのかも
21巻は、中学受験が一段落する一方で、スターフィッシュ、黒木の過去と未来、佐倉ちゃんの教育者としての葛藤などが、それぞれに展開・伏線回収されていきます。
一度、黒木パート、佐倉ちゃんパートと大人のエピソードを回した後で、ドカンとくる中学受験エピソードが必要だったんですよね。あり得ないくらいの。
「こんな奇跡は漫画かドラマだけだと思ったほうがいいですよ。それくらいあり得ない」って、黒木先生が答え言ってるもんね。
そんな風にリアリティを犠牲にして、得られるものって何だろう?
「『奇跡の合格』ができない子どもを、否定することはあってはならない」っていう言葉?
結局はご都合主義
「奇跡」なんてさ。一番受験塾で使っちゃいけない言葉だと思います。
不合格を気持ちよく描いて、奇跡の繰り上げ合格をエンディングへのパンチにして。登場人物はおもちゃじゃないぞ。応援してきたキャラクターが、単なる道具として扱われるのを見ることほど、萎えることはない。
奇跡っていうなら、思い切って上杉くんの開成合格でもよかったんじゃないの。もう少し受験の細かいテクニックを描いて、説得力持たせて。「国社の問題次第では、番狂わせがある…!」って伏線張ってさ。これジャンプ脳かな…
黒木、やめよった!!!
だんだん口が悪くなりますよ。
一応テーマは中学受験で、副題が「絶対合格の教室」で。なのに、主役のプロフェッショナルのスーパー塾講師が、なんの葛藤もなく職業を手放してどうする。
だったらもうちょっと、フワっとした副題を付けておいてよ。「受験の水底から『教育平等』の光を仰ぐ」とか?(気持ち悪すぎるかorz)
もちろん職業生活の中で、教育のあり方、社会のあり方に疑問をもつようになり、勉強し直してキャリアの舵を切るって、とても素晴らしいことですよ。
でもそれを、「絶対合格の教室」の枠内でやってどうする。
そういう意味で、フェニックスの灰谷先生のほうが断然共感できる。
中学受験をどう思ってるわけ?
結局、この漫画が中学受験をどういうものとして描こうとしているのか、スタンスが見えなかった。一応、中学受験がテーマなのにね。
なんとなく厳しい。なんとなく残酷。なんとなく子どもも大人も成長して、ムリヤリ不合格に泣かされて、なんとなく感動する。
え、何? 「人それぞれ。それでいいじゃん」?
ストーリー漫画をそんなテーマで描くな!
結局、あるある詰め合わせの漫画だったのかな、と思います。だったらさ、最後も塾講あるあるで、「あの刺激が忘れられなくて、塾講に返り咲きました」by黒木オチでもよかったんじゃないかな。
塾の講師が卒業後の子たちとつながってるなんてファンタジーよりもさ。初期の黒木の毒々しさを取り戻して終わってくれたら、熱かったのに。やっぱこれも、ジャンプ脳ですかね。
黒木先生も…
というわけで、黒木先生も心から消えてしまいましたとさ。
以上、かなりブラックな感想を吐き出せたかなと思います。
ちなみに光のほうでは、佐倉ちゃん、塾講続けてくれるの嬉しい… って思ってますから!
終わります!