岡田です。
派遣の仕事、3ヶ月の延長契約が成立し、職場の放置プレイもだんだんと解除されてきました。
派遣で働くことになったいきさつはコチラの記事「【派遣で働く】フリーランス主婦が派遣社員になる理由」
仕事はそんなにきつくないとはいえ、3人の子を世話と家事をして家を出て、定時まで働いてまた3人の子の世話をする、という生活。なかなか疲れます。
そんななか、心に浮かぶのは「楢山節考」の主人公、“おりん”だったりします。
今まで読んだ本の登場人物のなかで、随一の働き者。今日は「楢山節考」とその主人公、おりんについて、ネタバレなしでご紹介します!
深沢七郎著「楢山節考」は姥捨山をテーマにした小説
「楢山節考(ならやまぶしこう)」は。ギタリストであった深沢七郎の、小説家としての出世作です。1956年、中央公論新人賞受賞。
私は学生のときに読んだきりで、今は手元にありませんが、この小説の主人公、おりん婆さんには何度も励まされてきました。
ついこの間も、仕事帰りにふとおりんのことを思い出しました。
息子と嫁、孫たちと暮らす、おりんの村には、ある年齢に達したら“姥捨山”へ行く慣習がある。おりんもまもなく、姥捨山へ行く年齢になった―
そして、おりんは山へ行くその日が楽しみでならないのでした。
働き者のおりん婆さんの嬉しがりポイント
一番よく思い出すシーン。
「おばあがこんなに」と、みなうまがって食うだろう。
「楢山節考」(すみません、うろ覚えです)
自分が姥捨山へ行った後、家族が見つけて食べてくれるように、おりんはこっそり自分が食べるはずの穀類を溜め込んでいる(のだったと思います)。
自分がいなくなった後、家族が喜ぶ姿を想像して、嬉しくなるおりん。想像してはほくそ笑んでいる。
このシーンを思い出すと、おりんの陽(プラス)な気に浄化される気がするんです。
おりんの理想は、一生懸命働いて姥捨て山に迎えられること。山へ行く日、運の良い者には(山に歓迎されている)雪が降るという。自分が山へ行く日にも、雪が降ったら最高、いやきっと雪が降るだろうと信じている。
そういう、おりんのまっすぐさが、陰惨になりかねないこの小説のテーマをも浄化しています。
そりゃ、私の矮小な心だって、浄化してくれるでしょうよ。
おりん婆さんのウィークポイントは「歯が丈夫なこと」
もうひとつ、大好きなおりんのエピソードといえば。
おりんは「老人のくせにいつまでも歯が丈夫な自分」が恥ずかしい。
そんなある日、「自分で石をぶつけて前歯を折る」という計画を思い切って実行してみる。
成功して「やった!!」と微笑むおりんだが、鮮血ダラダラのスプラッタシーンになり、家族は騒然。てへぺろな失敗談になったのだった。
おりんの健やかさを象徴するエピソードだと思うんです。いつまでも悩んでいないで解決へ向けて実行してみる、行動力もいいですよね。
映像化、舞台化されて語り継がれる作品
「楢山節考」は1958年、1983年と2度映画化されています。1回目の監督は木下恵介、2回目は今村昌平。今村昌平の映画はカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞しています。
他にもテレビドラマにも舞台にもなっています。
野村万作演出・主演の狂言にもなってまして、これは観に行きたかった…!
ちなみに少子化が時代背景にないころの小説
決して、たんなる社会風刺の小説じゃないことは、強調しておきたいです。
まあ、読めばわかるか。
短編に入る長さの小説。読むが勝ちです。
最後に、この小説が中央公論新人賞を受賞したときの審査員だった三島由紀夫のコメントをwikipediaより引用したいと思います。
「はじめのうちは、なんだかたるい話の展開で、タカをくくつて読んでゐたのであるが、五枚読み十枚読むうちに只ならぬ予感がしてきた。そしてあの凄絶なクライマックスまで、息もつがせず読み終ると、文句なしに傑作を発見したといふ感動に搏たれたのである」
wikipedia「楢山節考」
おりん婆さんが、心のなかに生きていてくれるので、明日もがんばれます。
本当の話。